休日の過ごし方



「でさ、信彦が・・・」
「へえ、そうなんだ」
<ORACLE>でオラクルとシグナルが仲良く話している光景に俺は思わず

気にいらねえ

と、呟いてしまった
1ヶ月ぶりの休み
この日を励みにして、俺は仕事を頑張ってきた
そして、さあこれから、というときに
シグナルが来やがったのだ
そんな状態で笑っていられるわけが無い
が、そんなことより。いや、それも気に入らないが
何より気に入らないのはオラクルが楽しそうにシグナルと話している、そのことだ。
しかし、気に入らないからと言って、オラクルに、話すな、とか、笑うな、と言うわけにもいかず、俺はどうにも釈然としないまま、お茶をすするしかなかった







「じゃ、オラクル、まったな〜」
そう言って、シグナルがようやく帰って行った

もう来るな

と、つい思ってしまう自分が情けないと思わなくもない
オラクルにとってシグナルは、数少ない彼自身の友人の一人だ
来てくれたら嬉しいのは当たり前だろうし、会話だって弾むだろう
第一、オラクルは俺と居るときが一番楽しいといつも言ってくれている
その一言で、俺は満足しているはずだ
それなのに、目の前で仲良く談笑されていたら、無性に腹が立ってくる
毎度毎度、自分の考えの子供っぽさに思わずため息をついてしまった


トン

思索の海に耽っていた俺を呼び戻したのは、何かを置く音だった
顔を上げると、目の前にチョコレートが山と積まれたかごと、注ぎ直された紅茶があった

「オラクル・・・・これは?」

おそるおそる、尋ねてみる
俺は甘いものは好きじゃあない。そして、そのことはオラクルも知っている。
その上で、チョコの山を食べろと勧めてきたのだ。
てっきりシグナルへの態度とかで、また何か怒らせちまったのか、と思ったのだ。
けれども

「オラトリオが疲れているみたいだったから」
甘いものって疲労回復に良いんだろ?

それがオラクルの答えだった。
どうやら、オラクルの目には俺の姿は疲れているように写ったらしい
その気持ちは嬉しかったが
とりあえず、この量だけは勘弁してくれと言おうとして、ふと良いことを思いついた。
にやりと笑って

「俺は甘いものなら・・・」

そう言いながら、キスをしてやるとオラクルは案の定、真っ赤になってしまった

かわいいなあ

思わず、顔がにやけてしまう
さっきまでの、嫉妬にも似た考えなど、どこかに行ってしまったようだ
我ながら現金だと思わなくも無いが、そんなことさえ今はどうでも良い
もっと大事なことがあるのだから
俺がオラクルににっこりと笑いかけて

「こっちのほうが良いな」

そう言ってやると、オラクルは

「バカ者」

真っ赤になって俯いたまま、そう言ってくる。
その姿がまた類まれに愛らしい
俺は自然と笑みが深くなってしまうのが分かった。
そのまま、オラクルを抱え挙げると

「さて、疲れも取れたし。邪魔が入らないうちに」

そう言って、さっさとプライベートエリアに転移する


そんな俺の腕の中で、オラクルはもう一度「バカ者」と言った。


風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ くだけて物を 思ふころかな